自宅をリフォームしょうと思い立つ動機は人それぞれです。
水周りを含む設備の改善や家の老朽化、家族構成の変化、使い撃の悪さなどその理由はいろいろですが、なかでも最も多いのは「もっと快適にしたいから」です。
しかし、単に快適に過ごしたいからではリフォームの具体的なイメージが見えてきません。
リフォームという言葉の響きにワンランク上のライフスタイルを漠然と感じているだけで、家族の言い分や施工業者の意見を開くうちに迷いも多くなり、あれもこれもリフォームしたくなって結局予算オーバーしてしまうというケースは少なくないのです。
Yさん(44歳)は、以前から狭くて老朽化した台所が不満でしたが、シンク下の扉の建て付けが悪くなったのを機に、隣の暗いダイニングルームとともに家族の団らんも考えて洋風のダイニングキッチンにしようと思い立ちました。
家族に了解を得てから、リフォーム業者に依頼しましたが、上がってきた図面と見積りに目を落したとたん、ニコニコ顔のYさんと対照的に家族から恩わぬ不満が噴出しました。
お母さんが主婦の城をきれいにするならと、
長男は「妹と一緒の部屋じゃいやだ」、
お父さんは「遅く帰ってきても入れる追い炊き式の風呂がほしい」、
おまけにトイレも暖房便座に、と侃々諤々です。
すでに了解済みと思っていたYさんは大ショック。
業者への返事を保留して意見調整につとめました。
その結果、家族みんなの要望を聞くと予算がいくらあっても足りないので、年頃の子どものことを考え、8畳の和室を2部屋に区切って洋風の子ども部屋にリフォームすることにしました。
風呂場も追い炊き式の設備に替え全面リフォーム、これで予算いっぱいでダイニングキッチンは次回に回すことにしました。
ところがリフォームが終わってからというもの、子どもたちは居心地のいい自室にこもりきりで会話は少なくなり、ダイニングは以前にもまして家族が集まらなくなりました。
長湯で一杯やって喜んでいるのはお父さんばかり。
Yさんはやはり明るいダイニングキッチンを優先すればよかったと、ため息をついています。
Yさんは設備の改善と家族の団らんという本来の目的を忘れ、家族の勝手な希望を聞き過ぎたため失敗しました。
狭い個室は子どもが就職したり独立すれば、いずれ納戸がわりになるのがよくあるパターン。
かといって1部屋に戻すにも費用がかかります。
納得のいくリフォームをするにはまず、リフォームの目的をはっきりさせることです。
リフォームは大まかにいうと「修繕」と「改良」とに分けられます。
修繕は壊れたところを直すことで、メンテナンスも含まれます。
また改良は二つに分けられ、一つは家族構成の変化や高齢化対応などライフスタイルによる対応、もう一つはイメージチェンジ、グレードアップなど居住性と嗜好の追求があります。
実際には修繕と改良を同時にすることが多く、中古マンションを購入した後にリフォームをすることは最も一般的な例といえます。
住まいは「生活の器」とよくいわれます。
リフォームをして住まいが変わるとそれにつれてライフスタイルも変わっていきますが、何のためのリフォームなのか、リフォームの「日的」を家族全員で確認し何度も話し合ってプランを十分に煮詰めてからスタートするのが理想です。
また、家族構成は年とともに変化するものです。
あれもこれもと欲張らず十年を一つの区切りとして考え、優先順位を決めてからリフォームにとりかかりましょう。
予算内で希望がすべて実現できるとはかぎりません。
どのリフォームが重要なのか、家族で話し合って優先順位を決めておくと、予算をオーバーしたときの調整がしやすくなります。その際、老朽化や故障などで早急な対処が必要な箇所や、全員が強く希望している箇所の優先度を高くするのが一般的。
また、キッチンを交換するなら、いずれ交換することになる給排水管も同時に替えるなど、将来のことも考えておくといいでしょう。